• 外国人雇用をジョブ型雇用の視点で考える

    2024年9月6日

     行政書士の業務「国際業務」と呼ばれるものがあります。いわゆる、外国人が日本で働くために必要となる在留資格の申請に関わる入管業務のことです。

     申請の手続きは、外国人本人によって行うのが原則ですが、多少複雑なこともあり、本人に代わって、外国人材の受け入れ機関や公益法人の職員、あるいは届け出のある弁護士並びに行政書士などがその申請を取り次ぐことを認められています。

     そうした在留資格の基準は、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)に定められていて、大きく「活動類型資格(就労系を含む)」「身分類型資格」の2つに分類され、そしてその内容や目的に応じて現在29種類の資格が存在しています。

     そのうち就労系の資格には、「技術・人文知識・国際業務(以下、技・人・国)」、「高度専門職」、「介護」、「特定技能」などがあって、それぞれ認定や取得のための細かい基準が設けられています。

     たとえば、就労系の在留資格の中でも比較的割合の多い「技・人・国」に該当する活動は以下の通りです。

    「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(入管法別表第一の一の表の教授、芸術、報道の項に掲げる活動、二の表の経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行の項に掲げる活動を除く。)」

     基準に従えば、とある外国人を「技・人・国」の資格で雇用していたにも関わらず、人手が足りないからといって、一時的とはいえ、原則、工場のライン作業に就かせることはできません。ライン作業は、単純作業であって、一定の技術や知識を要する業務とは見なされないからです。

     万一、不正が発覚すれば、外国人本人不法就労罪に問われて就労を継続できなくなり、その場合、雇用主である企業不法就労助長罪に問われることになる可能性が高いです。

     そうした事態に陥らないためにも、外国人雇用を検討する企業は、入管関連法令内部審査基準、さらには入管業務の実務上の運用ルールに至るまでの概要を事前に把握しておく必要があります。

     外国人雇用の検討を始める企業にとって、過日東京都行政書士会が主催するセミナーで講師を務めた弁護士さんの解説は、とても腑に落ちるものでした。この方は当該分野の第一人者です。

     その中で、氏は、外国人雇用においては、ジョブ型雇用が非常に親和性の高い方法だと解説していました。

     ジョブ型雇用とは、仕事(ジョブ)に人を付けるという考え方に基づく雇用形態で、必要な職務内容に対して、その職務に適したスキルや経験を持った人を採用する雇用方法をいい、主に欧米の企業で主流の雇用方法です。

     一方で、採用の時点では職種を限定せず、入社してから適性などを判断して担当職務を決定する雇用方法をメンバーシップ型雇用といい、日本の新卒採用などがその典型例です。

     氏は、在留資格制度の特徴を考えれば、外国人雇用では、まずは、自社の求める職種とその職種に欠かせない職能を決め(①)、次いで該当する在留資格を確認した上で(②)、それ相応の知識やスキルのある外国人材を探す(③)という手順で進めるのが肝要だといいます。

     日本の雇用慣行に馴染んだ人事担当の方には多少戸惑うところがあるかもしれませんが、外国人雇用では、このジョブ型雇用の視点に立って人事戦略を立て、促進するべきだとわたしも強く実感しています。

     外国人雇用を検討する企業は、日本人を含めた自社の人材ニーズの把握から始める必要があります。とりもなおさず、「なぜ今・自社に・敢えて・外国人材の力・が必要なのか」を突き詰めて考えておきたいところです。

    以上

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