• 事業性評価の対策として「知的資産経営報告書」の作成を考える

    2024年9月12日

     金融機関とのやり取りが多い社長さんであれば、事業性評価という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。

     事業性評価とは、金融機関が融資の判断を行う際の企業の評価方法で、専門書によれば「企業の過去の財務情報や短期的なデータに過度に依存せず、企業の優れた事業実態や将来の成長力に注目して評価・測定・伝達する体系」(古賀智敏著『企業成長のデザイン経営』)と定義されています。

     金融機関が融資を決定する際には、定量的な情報としての財務諸表だけでなく、企業の戦略や強み知的資産(ここには社長の人柄やリーダーシップも含まれます)などの定性的な情報も考慮に入れて評価するということです。

     もし社長さんが「これからは融資や補助金などを申請する場面も出て来るだろう」とお考えなら、日頃から事業性評価のポイントを把握し、その対策を講じておくことが賢明です。 この点については、経済産業省(以下、経産省)が公表している「ローカルベンチマーク(通称:ロカベン)」というツールを参考にするといいでしょう。

     というのも、信金など地域の金融機関などでは、ローカルベンチマークを融資の際の資料として活用するケースがあるからです。

     ローカルベンチマークは、企業の経営状態知的資産を把握するためのツールです。経営者金融機関あるいは支援機関(士業・経営コンサルタントなど)は、ロカベンを枠組みとして対話を重ね、経営の現状や課題について相互の理解を深め、新規事業開発経営改善を目指します。

     ローカルベンチマークは、経産省のホームページで簡単に入手できますから、興味のある方はぜひ確認してみてください。

     ところで、知的資産とは何んでしょうか?

     知的資産とは、企業に固有の人材、技術、組織力、顧客ネットワーク、ブランドなどの目に見えない資産のことを指します。

     中小企業にあっては、自社の知的資産を意外と把握しきれておらず、自分たちにとっては当たり前のものであったとしても、外部から見ると非常に価値のある財産だったなどということがよくあります。

     こうした資産を自らしっかり把握し、強みとして有効に組み合わせて収益に繋げる経営を知的資産経営と呼びます。これも経産省が推進する中小企業における成長支援策の一つです。

     そして、そうした知的資産及びその活用状況を文書(見える)化したもの「知的資産経営報告書」です。

     「知的資産経営の開示ガイドライン」(経産省)によれば、「知的資産経営報告書」は、「経営者の目から見た経営の全体像をストーリーとして示す」ことを目的に作成されます。

     この報告書は、経営戦略の立案課題改善策の策定に役立つだけでなく、顧客や金融機関に対する企業価値のコミュニケーションツールとしても有用です。

     「知的資産経営ポータル」(経産省)には、いくつかの企業の報告書が公開されていますので、こちらもぜひ参照してみてください。各社20~30ページほどの体裁で、概ね企業理念から始まり、経営の現状や将来的展望が具体的かつわかりやすく、メッセージ性をもってまとめられています。

     「知的資産経営報告書」を作成する際には、ひとまずローカルベンチマークに取り組むことをお勧めします。

     同報告書の作成には、特段の決まりや手順、フォーマットなどはありませんが、先述の通り、ロカベンが自社の知的資産具体的に把握し、市場環境に即した実践的な改善策を策定するために最適のツールだからです。

     事業性評価の対策として「知的資産経営報告書」の作成を一度考えてみてはいかがでしょうか?

    以上

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