-
大学院生が留年した場合の在留資格「留学」の更新について考える
2024年11月6日在留資格「留学」の活動は、出入国管理及び難民認定法で以下のように定められています。
「本邦の大学、高等専門学校、高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)若しくは特別支援学校の高等部、中学校(義務教育学校の後期課程及び中等教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の中学部、小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)若しくは特別支援学校の小学部、専修学校若しくは各種学校又は設備及び編制に関してこれらに準ずる機関において教育を受ける活動」
大学とは、学部の他に大学院・短期大学・大学の別科なども含まれますが、いずれも通信制課程、また、大学院を除いて専ら夜間過程によるものは対象外とされています。
在留期間は、「4年3月、4年、3年3月、3年、2年3月、2年、1年3月、1年、6月又は3月」となっており、留学生個々人の在籍期間に応じて期間を指定する仕組みです。ただし、四年生の大学だからといって、誰もが4年3月の期限を付与されるわけではありません。
例えば、国費あるいは外国政府派遣の留学生であれば、在籍予定期間が3年3月以上4年未満なら4年が、4年以上なら4年3月が概ね決定されますが、それ以外の留学生の場合には、とりあえずは2年、もしくは2年3月の在留期限が決定されるのが一般的です。
在学中に更新期限が来れば手続きをする必要があります。その際には在留(素行)状況も勘案されることになりますから、入学後はしっかり勉学に励む必要があることは云うまでもありません。
先日、ある大学の先生から、「留学」の資格で博士課程に在籍中の学生さんが論文を仕上げるのに手間取っていて留年することになりそうだが、在留資格の更新はできるだろうかというご質問がありました。
「更新できる可能性はありますが、そのためには適切な理由を示す必要があります」というのがわたしの回答です。
審査要領には「申請人又は指導教授等からの事情を聴いた上で、引き続き在留を認めるに足る理由があると認められる場合には許可される」とされています。
実務上、理由に妥当性があり、加えて、素行状況や経費支弁能力に問題がなければ、2年間までの程度であれば更新許可を得ることはできるでしょう。ちなみに、その理由は、申請人ご本人や指導教授によって立証される必要がありますから、原因及び今後の対応策を「理由書」にしたため、手続き書類にこれを付して、判断を仰ぐことになります。
更新に際して意外と問題となりがちなのが素行状況に関するものです。これには「資格外活動(包括許可)」に関する違反などが考えられます。
「資格外活動(包括許可)」とは、在留資格で認められている活動以外で収入や報酬を受け取る活動の許可を受ける制度で、多くの学生がアルバイトのためにこの資格を受けています。
この資格で認められる就労時間は1週間当たり28時間以内(夏休みなどの長期休暇期間中は1日当たり8時間に拡大される)ですが、この時間を超えて就労してしまうと不法就労となって、素行状況に問題ありと判断されることになります。
結果、更新拒否となる可能性があります。「留学」の本旨は勉学にあり、アルバイトのし過ぎで本来の資格で認められている活動である勉学を疎かにしたと判断されるわけです。
外国人アルバイトであっても、雇い主は、必ずハローワークに「外国人雇用状況の届出」を行っていますから、こうした情報はすぐに把握されるようになっています。殊に留年した場合の更新時などには、ほぼ確実に調査が行われると考えておいた方が良いでしょう。
当然のことながら、心当たりのない方には心配のないことではありますが、念のため。
以上