-
「ドライバーの在留資格」について考える
2024年11月17日令和6年3月、「特定技能1号」に自動車(タクシー・バス・トラック)運送業が追加されることになりました。これに伴い、所官庁より当該資格に関する「運用方針」(以下、方針)並びに「運用要領」(以下、要領)が発表されています。
「運用方針」によれば、5年後の自動車運送業における必要就業者数は約29万人。今後、DXの進展や労働環境整備等による国内人材の追加的な確保によってしても、2万4,500人程度の不足が見込まれるという試算から、いよいよ外国人材の力を借りようというわけです。
特定技能は、一定の技能を有する人材に付与される資格ですから、タクシー、バス、トラックそれぞれの業務に必要な技能を有していることが付与の要件となります。
その要件とは、運転の技能と日本語の能力の2つです。たとえば、タクシー・ドライバーとして働く場合には、前提として、自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー)の合格と第二種運転免許の取得、並びに日本語能力試験(JLPT)でN3以上の合格が要件となります。加えて、所属機関(タクシー会社)が実施する新任運転者研修の受講が必須とされています。
評価試験は、運行管理者などの指導監督の下で、所定レベルの諸々の運行業務を熟すことができるレベルにあることを確認するものですが、第二種運転免許の学科試験に準拠した内容を含むものとすることで、合格すれば、即戦力として働くために必要な知識や経験を有するものと認める立て付けです。
日本語能力試験のN3とは、「日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる」レベルと定義されています。
「聞く」のスキルで云うと「日常的な場面でやや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる」というレベル。「読む」のスキルで云うと「新聞の見出しなどから情報の概要をつかむことができる」くらいのレベル。
接客に必要な会話力を有することが求められると云うことなのでしょう。
ちなみに、バス・ドライバーの場合は同様にN3以上が、トラック・ドライバーの場合にはN4以上の合格が要件となっています。海外からの採用の場合、そうした外国人材は、タクシー会社に運転手として採用され、雇用契約を結んだら、まずは、「特定活動」の在留資格で来日することになります。
「特定活動」の期間は1年。当該外国人は、普通自動車の免許を取得するか、外面切替(=外国での運転免許を取得済みの方が、日本の運転免許に切り替える方法)を行い、その後、第二種運転免許を取得すると共に新任運転者研修を修了する必要があります。この間、所属機関(タクシー会社)において法令、接遇、地理、安全に関する研修を受講しつつ、車両の清掃などといった付随業務に従事することも認められるそうですから、ドライバーとして知っておくべき作業を学びながらデビューまでに稼働の準備が出来そうです。
ここで大事なのが採用戦略です。
わたしが担当なら、当初は、身分系の在留資格や、技術・人文知識・国際業務など他の就労資格で既に日本で働いている方からアプローチを始めるでしょう。日本語はもちろん、既に日本の交通事情を理解している可能性が高いからです。
殊に、身分系の在留資格の外国人材であれば、在留期限や諸々の制約を気にする必要はありませんから、より都合がいいかもしれません。今後、外国人材を増やしていくことをお考えであれば、早い段階でそうした人材を社内に確保しておこくとで、将来、会社と外国人材の橋渡し役になってもらえる期待もできます。
現在、当該資格は、所官庁により方針並びに要領に従って着々と準備が進められており、間もなく制度が開始される見込みです。
いずれにせよ、外国人材の雇用に踏み出す際には戦略的に臨むことをお勧めします。結果、採用に成功した暁には、その実りは決して少なくないことでしょう。
以上